【櫻の園(1990)】

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桜の咲く季節。私立櫻華学園高校演劇部。

創立記念日恒例のチェーホフの“桜の園”上演のある朝、しっかり者の部長・由布子はいきなりパーマをかけてきた。

さらに、前日、部員の紀子がタバコを吸って補導されたというニュースに動揺する部員たち……。

allcinema ONLINEより。

実際は桜のシーンは少ないんですが、桜のイメージがものすごく強い作品。予告は本当に桜だらけです。

特筆すべきは

クオリティの高さ。

いまではティーンアイドルの原作ありの青春ものなんて、ほとんど原作とあってるかどうか以外、ハードルが高くないのが一般的。それこそ、かっこいいとか、かわいいとかの感想の方が多いと思います。

もちろん、そういう感想もありだとは思うんですが、それでは感想記事が一行で終わってしまうし、読んだ人には全然伝わらないでしょうしね。

舞台は毎年創立記念日に『桜の園』を演じている私立高校の部室。上演を控えた朝、生徒たちが少しずつ集まってくるんですが、部員のひとりである杉山が補導されたという話をし始めます。

しっかり者なはずの部長はパーマをかけてくるし、お嬢様学校の演劇部員たちは何かが変わっていくような雰囲気。

やがて、臨時の職員会議が始まり、『桜の園』の上演をやめるかどうかの話し合いがされていることが演劇部員たちの耳に入るんですが、自分たちには様子を見に行くことしか出来ないでいるのでした。

顧問の里美先生も、自分の恩師である坂口と言い争って涙している様子。

結局、上演が行われるのかどうかもわからないまま、もやもやした気分で待つ演劇部員たちの思いのたけを描いています。

いまでは高校が舞台の作品の場合、現役の高校生が演じる事も少なくないですが、当時はまだ現役からちょっと外れた人たちが演じることも多かった時代。

メインとなる中島ひろ子、つみきみほ、白島靖代はそれぞれが19歳。1年くらい巻き戻された感覚でしょうね。

その中でもタバコで補導された杉山を演じているつみきみほの存在感は異常。素人目にもわかるレベルで、そこに『いる』というのがわかります。もちろん、奇抜な恰好で目立つとか、そういう意味じゃありません。

他の娘たちも、女子高生が女子高生を演じているだけなので、演技の上手い下手に関わらず、生々しい。雑談一つとっても、勝手に喋らせて、適当に選んで撮ったと言っても信じそうです。

日本の女子校というちょっと独特な空間が見事に作り出されているように感じます。

その中で思春期ならではの彼女たちの葛藤や苦悩、愛情について繊細に描かれているんですが、それが本当に細かい。監督の指示なのか、役者たちの演技なのかはわかりませんが、無言での視線ひとつにも意味を見出してしまいます。

特にクライマックス付近で部長の志水が好きな倉田に告白し、記念撮影をするんですが、そのシーンのふたりがカメラ目線から、清水が倉田を一瞬見て、目線を戻すと、今度は倉田が清水を見ます。

このシーン、なんど見ても凄いよなあって思います。なんか恋愛している時なんかで、つい相手の反応を見ちゃうけど、お互い見つめ合うわけじゃないっていうリアルさを感じるんですよね。

最近の映画だったら、ほぼ間違いなくシャッター切る瞬間にキスしちゃいそうです。それなしにお互いの愛情を感じます。

また、このシーンをさらに際立たせているのが杉山で、彼女は彼女で清水のことが好きなのにもかかわらず、その姿を見てしまいつつも、必死に堪えて応援するという姿が描かれています。

よくこの映画の感想で、彼女たち3人の『好き』は『LOVEではなく、LIKE』と表現されることが多いですが、個人的には逆だと思います。その上で『恋ではなく、愛』と付け加えたい。

個人的に恋って異性に対してするものだと思うんです。でも、愛は性別を選ばない。個人的に恋って性を感じさせる言葉だと思うんですよね。それこそ恋は下心、愛は真心じゃないですが。

もっとも、この映画で自分が一番好きなシーンは、清水が倉田の衣装合わせをしているシーン。ふたりきりで衣装を直しているんですが、観ている側はすでに清水が倉田を好きなことを知っています。

その上でかなり近い距離感で会話をし、糸を口で切るシーンなんて、ちょっとドキドキします。

会話の内容も、お互いを信じていないと出来ない告白で、演技なのにまるで長年付き合ってきた幼馴染のよう。つみきみほの存在感が強過ぎて話題に上がりにくいですが、この二人の実力ってかなり高いんだと思います。

他にも、下級生が上演を中止にしようとする教師たちが『来年があるから今年はいいだろう』という理由で中止しても構わないと思ってる話を聞き、「先輩たちには今年しかないし、自分たちには来年しかない。なのに、桜は毎年変わることなく咲くのが許せない」というようなことを主張するシーンとかも面白いシーンだと思います。

女子校全部がこんな雰囲気だと思わないですが、本当にうまく切り取られた凄い作品だと思うので、ぜひ観ていただきたい映画です。

福田沙紀主演のリメイクも決して酷い作品ではないですが、フィルム代も出ないような大コケ振りなので、間違えて観ないように注意していただきたい。

オススメ度(10段階)……★★★★★★★★★★
(吉田秋生の漫画って同性の恋や愛を描くのが本当に上手いと思う。)

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