太平洋戦争末期、軍の指定である富屋食堂を切り盛りする鳥濱トメ(岸惠子)は、地元の知覧が特攻基地となったことを知る。トメは家族と離れて出撃を待つ若者たちが自分に会いに来ては飛び立っていくことを引き留めることもできず、複雑な思いを胸に秘めながら母親代わりとして慈愛の心で彼らを見守り続けていくのだが……。
シネマトゥデイより。
終戦間際の特攻隊を食堂の女将の視点を中心に描いた作品。石原慎太郎制作総指揮なので、もっと右寄りな作品なのかと思いましたが、美化された感はあるとはいえ、意外と中立な雰囲気の内容。
てっきり、特攻隊で散った人たちは偉かったんだ的な内容なのかと思ってました。
特攻隊の中でも死にたがりがいたり、いま特攻しても犬死にだと思っているのもいたりするのが、戦争映画としては珍しい。もっとも、フィクションの戦争映画ではなく、実在の人物から聞いた話なので、それがリアルなんでしょう。
やたらと規則を押し付けて、統制をとろうとする軍部と、自分たちが国や守りたい人たちのためとはいえ、死にに行くのに明るくふるまう特攻兵たち。この関係って日本独特です。
特攻って日本人からしてみれば、戦争中だからおかしく思わないかもしれませんが、行動だけ見れば自爆テロと同じ思考だと思うんですよね。
それを含めて、日本の戦争末期の状況を描いた作品って、他の国の戦争映画と違って異質な雰囲気を持っている気がします。
何故か悲壮感が少ない
んですよね。妙に明るい。もちろん、経済的には追い込まれているので、貧しさ等は感じますが。でも、アメリカやヨーロッパの映画のように生きるのに必死な様子や、現実の北朝鮮のような貧富の差や抑圧されているような印象はあまり受けません。
映画の中の日本の戦争末期って、対象が戦争か、経済かの違いだけで、現在の平和ボケした日本と変わっていないのかもしれません。
現在の日本も、終戦間近の日本のように、実はもうどうにもならなくって、国民も薄々気づいているのに、見ない振りをしているように感じます。
食堂の女将さんと特攻兵たちの交流、そこから派生する出来事は本当に感動的だし、特攻シーンもよく描かれているとても良い映画なんですけどね。
身内に戦争に殉じた人がいれば救われる映画ですが、そうでない人には戦争の愚かさだけが際立つ映画でした。
オススメ度(10段階)……★★★★★★★
(主役は徳重聡なんですが、21世紀の石原裕次郎という名前とは程遠い)
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