大学生の恒夫は、ある朝、近所で噂になっている老婆が押す乳母車と遭遇する。そして、彼が乳母車の中を覗くと、そこには包丁を持った少女がいた。脚が不自由でまったく歩けない彼女は、老婆に乳母車を押してもらい好きな散歩をしていたのだ。これがきっかけで彼女と交流を始めた恒夫は、彼女の不思議な魅力に次第に惹かれていくのだが…。
allcinema ONLINEより。
ただ、岩井俊二の作品が好きなタイプにオススメな映画。ただし、濡れ場があるので、そういう関係を望んでない相手との視聴は微妙。
世間でのレビューは『良い話』、『(感動して)泣ける話』というのが多いですが、信じちゃダメです。実際は
ただの偽善者と障害者の話
です。
多分、こう書くと単に自分がひねくれているだけだと思われそうですが、実際にそうだから仕方がない。
ひょんな事から出会ったお婆ちゃんと障害者に優しくするのはいい話だし、お互いを理解しようとするのもいい話。彼女を捨ててまで、ジョゼを助けていこうとする恒夫はかっこいい。
でも、観終わった感想は良い作品が感動する作品とは限らないという印象。そもそもセフレと彼女がいる大学生が、一時の感情で何かをしたとしても、感動はしづらいと思う。
実際、映画として観たら、面白いし、印象に残る言葉やシーンは多い。
特にジョゼに「帰れ!」と言われて恒夫が帰ろうとする背中に、「帰れと言われて帰るくらいなら帰れ…」と泣きながら本音を告げるシーンなんかは迫真に迫っていたと思う。
他にもジョゼは自分が障害者であることで、恒夫との間には壁があることを理解していて、この愛はいつまでも続かないと思っているのがわかっているシーンや、それでも少しでも長く一緒にいるために文字通り身体を張るシーンは切なさに溢れている。
それらは現実には健常者の池脇千鶴が演じているにもかかわらず、長い間足が動かない女性に見えてきて、公開当時の話題は池脇千鶴がベッドシーンを演じたことに集中していたのが信じられないくらいです。
他にも実在する小説家フランソワーズ・サガンの文章を引用したセリフや、30P程度しかない短編をここまでの作品にしたのも凄い。
妻夫木にしても、上野樹里にしても、演技力が低い役者ではないし、キャラクターと合っていないわけでもない。
純粋に『恒夫』という人間の中途半端な優しさが、いかにも現実に溢れ返っている中途半端な優しさを想像させるため、嫌な気持ちにさせるんだと思う。
様々な出会いや別れが人を成長させるというのはわかる反面、恋愛映画では現実に引き戻されたくないというのも事実。
それにしても、同じ作品でヌードになっているのに話題にもされない江口徳子はちょっとかわいそう。かなり味のある役者さんなのにね。
オススメ度(10段階)……★★★★★★★
(嫌な感情が芽生えたとしても、良い作品は良い作品)
《関連リンク》
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私は偽善の部分より
若気のいたりの好奇心を感じました。
ジョゼの方が強いから
短い間でも恋愛を経験するという
選択したのではいかと。
いい作品でしたね~。
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>green-rainさん
コメントありがとうございます。
難しいところなんですよね。
多分、一般的にはgreen-rainさんのように
感じる人の方が多いとは思うんですよ。
ただ、個人的には別れるシーンが省かれている
ことで、恒夫が凄く不快なキャラクターに
仕上がっているんですよね。ああやって
わざと省略する演出があると理解した上で。
でも、本当に良い作品です。
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ただの偽善者と障害者の話でしたか……もっと感動的な作品だと思ったんですけどね……
妻夫木聡は演技力ありますよねww
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いろんな人に勧められてはいるのですが、
なんだか手が伸びずにいましたが!!
なんと、enta_mattariさんのレビューで好奇心に火がつきました(笑)
いや~
感動する部分、偽善の部分を味わってみたいものでする。
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>しゅんさん
コメントありがとうございます。
感動的な話なんですよ、ラスト直前まで。
よく悪い奴が人情で困ってる人を救ったり
するドラマがありますけど、救って終わりかと
思ったら、後日談で救えてなくって、
結局困ってる人たちが自力でなんとか
していますっていう言われたら……ねえ。
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>Arinkoさん
コメントありがとうございます。
結末を見なければ、基本的に感動する話です。
結末を観ることでいままでしてきたことを
台無しにしている印象を受けるだけなので。
だから、人によっては偽善に感じない
可能性もあります。