ある日、フランスの田舎でこじんまりとしたレストランを経営するオルタンス(カトリーヌ・フロ)のもとにフランス政府の公用車がやって来る。彼女はパリ中心部にあるエリゼ宮殿と呼ばれる大統領官邸へと招かれ、フランソワ・ミッテラン大統領のプライベートシェフに任命されたのだ。だが、これまで女性料理人がいなかった男社会の厨房ではオルタンスはよそ者でしかなく……。
シネマトゥデイより。
この手の○○の料理人というタイトルの作品は料理で人の心を動かし、交渉を成功させたりすることが多いですよね。
この作品もそういう類の作品かと思い、視聴。結果から言えば、全然違ってました。
南極で料理人として働くオルタンス。4年前にスカウトされ、大統領のプライベートシェフとなった彼女が、なぜ南極で働いているのかというストーリーでした。
そのため、南極とエリゼ宮のシーンが切り替わるんですが、周囲の登場人物を気にしていないと、いつの間にか場面転換していたりします。
前述の通り、料理人が料理で人の心を動かしたり、料理勝負するような作品でもないし、どうやら実話を基にしたヒューマンドラマな様子。
フランスの大統領だったミッテランと、そのプライベート・シェフだったダニエル・デルプシュのことらしい。
おふくろの味を所望する大統領と、郷土料理が得意な様子の女性シェフの話なので、本当に食べ物はおいしそう。
ただ、オルタンスに共感を得る人たちには良い映画だと思うんですが、政治の世界も描いた作品と考えると、オルタンスを
良い主人公とは捉えづらい
んですよね。
スカウトされた宮殿内の厨房は男性社会であり、招かれざる客であるオルタンスが冷遇されるのは同情するところ。
でも、初めに説明されたルールを守ろうとしない姿はちょっと不快な印象を与えます。特に個人的には食材の仕入れは理由が必要だから担当を通すように言われたにもかかわらず、勝手に仕入れる行動には好感を抱けませんでした。
単に必要な食材だったからという理由なら鼻につくことはなかったと思うんですが、描かれたシーンを見る限りでは知り合いに頼んで仕入れています。
結局、その辺りが後に影響するんですが、こだわりがあるんだから高いのはしょうがないというような言い訳をするので、余計にモヤモヤ。
こだわりがあるのはどこの農家も一緒なわけだから、身内を公邸御用達と名乗ることも出来てしまう状況にするのはやっぱりまずいと思うんですよね。
そういうことを考えずに行動するオルタンスを正義のように見せ、人間としては好きになれないけど意外とまともなことを言っている人々が悪く描かれている印象。
オルタンスへの嫌がらせとしか思えない状況に入ってから登場する栄養士の言動は、馬鹿なのかと疑ってしまうレベルなので、悪と思われてもしょうがないですが。
全体的なイメージは、【英国王のスピーチ】みたいな印象を受けるような気もしますが、周囲への影響を顧みず、ふたりだけの世界を構築するだけなので、【英国王のスピーチ】のような感動はありません。
人間的には悪い人ではないと思うんですけどね。
オススメ度(10段階)……★★★★★★
(観る人が何にウェイトを置いているかで評価がかなり分かれる作品)
大統領の料理人 [Blu-ray]
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