木村拓哉主演の時代劇。監督は【男はつらいよ】や、【釣りバカ日誌】の山田洋次監督。
三村新之丞は、藩主の毒見役を務める侍の1人。妻の加世と、使用人の徳平と質素に暮らしていた。しかし、新之丞は武士としてやりがいのない生活に限界を感じていたのである。子供好きも高じて、自宅で道場でも開こうかなどと考えていた。
しかし、そう考えていた矢先、毒見をした新之丞は高熱を出して倒れてしまう。一時、何者かの謀略かと城内は上へ下への騒ぎとなったが、真相は料理人が時期はずれの食材を使うという不始末であった。だが、貝が持っていた毒のせいで、新之丞はその後遺症で失明をしてしまう。
光を失った新之丞は、武士としての勤めも果たせず、衣食すら人の手を借りなければならないことを絶望していた。それでも妻の加世に支えられ、城からの寛大な処遇により、なんとか命を絶つことを思いとどまる。
そんなある日、加世が藩の有力者である島田藤弥と不貞をしている事を知り、新之丞は妻を問いただした。すると、島田は家禄を口実に加世のことをもてあそんでいたのである。自分の生活が、妻を盗み取った男のおかげだと知った新之丞は、自分を犬畜生以下と蔑み、殺してくれと懇願する加世に離縁を申し付けた。
しかも、実は家禄の保持は島田の口ぞえではなく、藩主の温情だったのである。その卑怯なやり口に新之丞は怒りを覚え、自らの武士の一分を賭け、島田に勝負を挑んだ。
どうしても娯楽映画なイメージが強いので、いわゆる殺陣重視の作品かと思っていたんですが、普通の時代劇でした。監督自体が派手なアクション撮ってない山田監督なんで、元々こういうじっくりとしたドラマな可能性もあったんですが、主演がSMAPだったんで、派手目かと思ってました。
さて、そんな映画のキーワード『一分』。上映当時、やたらと○○の一分なんてHPやブログ、書籍なんてありましたが、案外意味知らないと思います。なんとなく、ほんのちょっととか、何かの長さとか量とかの意味があるのはわかるでしょうけど、この場合の一分は『面子』を表しています。つまり、新之丞は自分の武士としての面子を賭けているわけですね。これを知って観ると、実は全編通して、新之丞がプライドの高い発言をしているように感じます。いわゆる高慢ちきじゃないですよ。
ただ、派手な殺陣がないので、これっていう見どころはありません。強いて言えば、新之丞が加世の不貞を知り、自らを犬畜生以下と蔑むシーンと、その後の加世が新之丞の見えないはずの眼を怖れるシーンの木村拓哉の表情は見入るレベルだと思います。
SMAPファンや派手な殺陣を期待している人には勧められませんが、SMAPを知らないから敬遠した時代劇好きは一見の価値ある作品だと思います。
オススメ度(10段階)……★★★★★★
(地味だけど良い作品)
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